その代表作『無明の井』は脳死と心臓移植を、『望恨歌』は朝鮮人強制連行を、『一石仙人』はアインシュタインの相対性理論をテーマとする。まず、テーマが良い。現代性、また理系という従来の能楽界になかった視点、群を抜いて鮮やかだ。稀にこういう正統派の創作に接すると、私も頑張らねば、などと勇気が湧いて来る。唯一、疑義を差し挟むとすれば、これほどの現代的テーマを厳選しながら、何故古語にこだわっていられるのだろう。テーマから言うなら、口語謡に挑戦されるべきではなかったかと私は思うが、どうだろう。あるいはやはり、現代語の謡曲能本は不可能とお考えなのだろうか。『香炉峯』はオーソドックスな伝統語で書いたが、いずれ、完全な現代語でも能を書きたい。そちらも乞御期待である。