先日、知人が主宰する劇団の本番があり、お手伝いがてら拝見してきた。
実はその芝居は再演であって、二年ちょっと前の初演には私も出演していたのである。
私が演じた役の名は「ラクァイ」という。
初演には自分が出ていた、それを他の俳優が再演するのを客席から観る。
こういう経験は初めてではないが、やはりドキドキするものである。
再演する方を素直に応援したい気持ちと、そう簡単に負けてたまるかという初演者のつまらぬ意地と…
帰り道、色々と初演時の記憶が蘇ってきた。
そして、ラクァイの悔しさを思い出した。ラクァイというのはこの二十年間、悔しさだけで地下の暗闇の中を生きながらえてきた人物なのである。二十年前、ある拳法の使い手に敗れた、それがもう悔しくて悔しくて、その悔しさ、せめて奴よりも強い弟子を育てて奴を見返してやりたいというその一念だけが、幽鬼の如く残存して今も地の底を這いずり回っている、そういう役どころなのだ。
思い出すうち、歩きながら手に持った空のペットボトルをグシャグシャに握り潰し、あまつさえ不覚にも落涙して、ああ、私の中にはまだラクァイが生きているのだなあ、と思った。
さて、話は変わって、今日も稽古であった。今週末には本番である。
今日の稽古は、私としては非常に意義あるものだった。私の役は「江原」というのだが、今日二回目の通し稽古の最中、一瞬、私は「江原」になれた気がする。
俳優としては、ああいう感覚の裡に、常に在りたいと願うばかりだが…
終わって演出家に「江原、その感じで」と言われた時はほっと胸を撫で下ろしたのだった。
本番に向けて、ますます「江原」になりたいものである。