週刊誌『AERA』今週号に興味深い記事が載っている。曰くオタクビジネス爆発、わびさびに続く日本の新文化「萌え」市場に熱い視線が注がれているとの事。で、この記事の冒頭に修善寺が取り上げられているのである。
記事によれば、修善寺のさる温泉宿が今、鉄道ファンに人気なのだとか。この宿、6年前に宴会場を潰し、大型鉄道模型を並べて遊べるスペースに改造。最盛期には約30軒あった修善寺の旅館が約20軒に減った今、ここの客数は改造前から1.5倍に伸び、その9割以上が鉄道模型ファンで占められていると言う。年に数回来ると言う客のコメントが紹介されていた。
「修善寺にこの旅館以外何があるか知りませんね」
修善寺には、温泉宿の他に、修禅寺という名の寺があるのである。
と言うか、この地名はもともと寺の名前に由来しているのだ。地名と寺名が一緒では紛らわしいので、のち地名の場合は「善」の字を用いるようになったのである。
この客、鉄道ファンと言うが、各駅付近の見所なんかにはてんで興味がないのであろう。鉄道ファンには、駅名や路線図、またその一帯の観光事情等に通暁する地理系と、もっぱらその造形美に耽溺する車両系の二派があると聞く。
「食事も、ある程度うまけりゃなんでもいい」そう言って持参のふりかけを食卓に並べると言うのだから、これは旅先の地味に舌鼓打つなんてタイプではない。明らかに後者、それも相当重度なお人であろう。
それにしても、思う。
宴会場を潰して小劇場を興そうという粋な旅館が彼の地にあれば、さっそく企画書を持参するものを…。
とまあ、これは半ば冗談であるが、今週末、私はほぼ一年ぶりに、その修善寺に赴く。
昨夏は、ある日突然思いついて独りで出かけたのであった。その約8ヶ月後、私は今申楽次回作『修禅寺』、その第一稿をどうにか書き上げる事となる。
先ずはその脱稿を、二人いる主人公のうちの一人・源頼家の墓前に報告する事。それが今回の旅の大きな目的となるであろう。
今回は、朧座制作部の笛麿・鼓之丞が同伴してくれる。実は彼らは「勤め人」という裏の顔を持ち合わせているので(もっとも勤め先から見れば、「朧座制作部」とやらこそ裏の顔に他ならぬ訳であるが)日頃多忙な彼らにとっては夏休みの旅でもある。
頼家は、修禅寺門前の指月丘に眠っている。
我々の行く17日には、頼家忌という地元の祭りが執り行われるらしい。
翌7月18日は、旧暦で頼家の祥月命日に当たる。
そして本日7月11日は、これも旧暦で、今一人の主人公・北条政子の祥月命日に当たるのであった。