ク・ナウカ『王女メディア』を観て
Wさん
こんにちは。昨日、朧座衆の一名も誘ってク・ナウカの千秋楽を観て来ました。
私の場合、どうしても作り手の目で見てしまいます。
(これってやや悲しい気もしますが、もはやどうにもなりません。まあ、そういう醒めた意識を束の間忘れさせてくれる作品との出会いを求めているという事になりましょうか…)
従って、感動一辺倒という訳には行きませんでしたが、さすが大先達劇団、学ぶところ思うところは多々ありました。
残念ながら中盤、動きの女優と語りの男優のテンションが合っていない箇所があり、女優にかなりムカついたり(これ、人間浄瑠璃なら致命的だと思うのです)、千秋楽のせいか終演後の役者の挨拶がやたらサービス過剰でしつこかったり(これは観客にも責任がありますが)。
しかし最も感じた事は、自分の産んだ息子を殺して悠然と去ってゆく母、こういう人物造形に、私はついに全くリアリティを見出せなかったという事です。それにもし仮に脚本・演出・俳優等の力量によってこれがリアリティを持ち得ていたとしても、私はおそらくそこに共感する事はないのではないか。そう思わざるを得ませんでした。
だって、日本人の女はそんなえげつない事しませんもの…。
日本に生まれて良かった。あの作品に対し、こういう招かれざる感想を抱いてしまうところが私の厄介な性分であります。
思えば北条政子もまた、「我が子を見殺しにした」「いや、自ら手にかけた」などと一部の人々から言われておりますが、改めて、私どもに課せられた責任は重大である事を、思わぬところで再確認させられました。
僭越を承知で断ずれば、朧座はとにもかくにも大先達ク・ナウカによる大古典『王女メディア』を凌駕する作品を是非とも産み出さねばなりません。
と、そこのところを今一人の座衆と確認しあって、帰路につきました。
読み返せばひねくれた物言いの数々、どうかお許し下さい。Wさんならきっと笑いながらお読み下さるだろうと思いまして…
朧太夫