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そろそろ真剣に朧太夫の面を

日々朧々の文体を変えてみる事にしました。デアル調からデスマス調に。これには訳があります。

昔、芝居を本格的に始めたばかりの20代前半の頃、諸先輩方と仕事を御一緒しながら心の奥底で密かに感じていた事があります。
「30代の役者って、なんであんなにとんがってるんだろう?」
いやもう、それはそれはいろんな目に遭いました。もちろん、その全てが今の私の貴重な肥やしになっている訳で、いびり抜いて下さった方、ぶん殴って下さった方、千秋楽が済んだら殺しに行くと真面目に宣告して下さった方をはじめ、諸先輩方には本当に感謝しております。有難う御座いました。
まあ、それはさておき。
「30代の役者って、なんであんなにとんがってるんだろう?」
これが、幼い当時の私には疑問に思われて致し方がなかった。ところが、最近ようやく、その訳がわかってきたのです。
今年30になる私自身が、いつの間にやら、とんがってきているのです。これは、自分の文章をあとから読み返してみるとよくわかります。非常に攻撃的な筆致を帯びがちなのですね、このところ。好ましい事ではないと知りつつも、言葉を紡ぐうち、ついついキーボードを叩く指先に毒がこもってしまうのです。これはいったい何故か。

恥を忍んで白状すれば、これは要するに焦りの故ですね。本来の及第点よりも、はるかにはるかに売れていないという焦り。30代ともなればもう良い大人であって、本当ならもっと売れていなければならない筈なのに、現実は厳に深刻である。かかる焦りこそが、今の私を含めた多くの同年代の同業者を、しばしばやけにとんがった態度へと硬直させる原因なのではないか──と、思い至ったのです。

そしてこのままでは、私はますますとんがった方向へと進んで行く可能性があります。
なぜなら、私には実は三大願望というものがありまして、
一、朧座衆には、朧座の仕事だけで美味しい御飯を食べて戴く
一、朧座専用劇場兼宿泊施設を建てる
一、将来、日本文芸史の教科書に今申楽という一項目を立てさせる

以上三点を、なるべく早期に実現したいと私は考えているのですね。ところが、これらの願望に比べて、今現在の私が置かれている現実と言ったら…!この理想への距離、考えただけでも眉がイライラとつり上がって来るではありませんか。
これは精神衛生上、大変宜しくない。こんな顔色の悪い人間に一座の太夫が務まるものでしょうか。
そもそも、昔の私は諸先輩方のつり上がった眉を見ながら密かに決意していたのです。決して自分は、ああはなるまい、と。
では、この不機嫌の傾向をいかに断つか。と、そこで思い至ったのが、この日々朧々の文体問題なのです。
今まではデアル調で書いていました。私はもともとデアル調が好きですから。
しかしこのデアル調、論文論説の類で社会の悪を斬るといった趣にはよく馴染むのですが、読者への感謝の念とか尊敬の念とかを表現するにはなかなか向いていません。そういう目的には常体よりも敬体、デスマス調の方が向いています。
実際、私も朧座衆のメーリングリスト等では日々デスマス調を使っているのです。
よし、先ずはここからだと思いました。座衆メーリングリストだけではなく、日々朧々をお読み下さる全ての方々に、もっと言葉で敬意を表するところから始めよう。
朧座衆とは、もとは朧座に御縁を持って下さった全ての方というのが原義なのですから。そういう意味では、このブログをお読み下さっている方全てが朧座衆なのですから。

考えてもみれば、こういうスタンスの方が、今申楽一座という「サービス業の本分」論から言っても妥当のようです。三大願の実現も、こちらの行き方で行く方が早そうですね。
という訳で、悪を斬ると言ったスタンスはもうそろそろ止めておきます。
そろそろ、真剣に朧太夫の面を着けませんとねえ。

とは言いながら、これから先も時には怒りが爆発して、デアルが噴き出す場合もあるでしょう。
その時は、どうぞ再びお付き合い下さいませ。

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2005年08月28日 04:29に投稿されたエントリーのページです。

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